突然の出張命令にて、ひとり名古屋から東京に来ている。
用も終わり帰路に着くまでに少し時間の空いたので、此方で無いと出来ないことを探してみたが、思うように見つからない。
古本屋を巡ってみたが、違いはといえば、品揃えが「より良い」くらいで、本質的に此方で無いと出来ないことなどなかった。
都市圏は物質的に均質だ。似たような店が立ち並ぶように見える。
しかし、そんなはずはない。チェーン展開していないも食事処ならば。
住んでいた事があるにもにも拘らず、気の利いた店の浮かばない自分に失望しながら、インターネットに頼る。
浅草の洋食屋ヨシカミ。
もうこれしかない。あの、手間暇をかけ凝縮されたビーフシチューを食べてから帰ろう。意気揚々と至る経路を検索した。経路の下には営業時間も表示された。
休みであった。今日は不幸にも木曜日だった。おそらく定休日なのだろう。
私は今、何処にでもありそうな居酒屋で、何処にでも居そうな見知らぬ労働者の愚痴が耳に飛び込むのを肴に、何処にでもある麦酒を呑んでいる。
もう帰ろう。