エッセイ

物語で語る

冬至を過ぎ寒空の色は日に日に透明度を増していく。外に出るには厚手の外套が欠かせなくなってきた。部屋から出たくない。それどころか一日中布団の中に居たい。外の空気はそんな氣にさせる。

そんな日に私をわざわざ外に引き摺り出したのは、何処か遠くで炎えるモノだ。

映画『えんとつ町のプペル』

そのエネルギーを観測すべく映画館に向かった。

その中には確実に強大なエネルギーが存在していた。それは、焼き尽くす炎の象ではなく、熱された鋼が持つような靭やかな暖かみとして感じられた。

明確なメッセージの存在。しかし、厭らしさはない。芸術や物語が担う役割を、強く想い起こさせた。

古代より人間は、絵画や音楽そして物語によって思想を伝達してきた。とある思想の体系は宗教と呼ばれたりもする。

思想は、芸術や物語に落とし込むことによって、伝達のハードルを下げることができる。直接的に表現すると角の立つ内容も、物語とすることで快く、時には感動を伴って伝えることができる。

嗚呼。本当は。語りたいことがある。叫びたいことがある。きっと誰にでも。

そしてそれには、こんなにも「美しいやり方」があるということだ。

凍てつく風のなびく名古屋。
曇天の向こうに、星が見えた氣がした。

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